不思議な恵み

今年も「神戸・越年越冬炊き出し」の時がやってきた。
一年前の元日は在宅ホスピス中であったし、何より10〜12時は親族全員集合の時間帯。
台所をあずかるものが家を空けることなんて許されない。


ところが、不思議なことが起こった。
詳しい流れは憶えていないが、父のリズムと泊っていたメンバーのリズムがピッタリ合って
新年の初会食の時間が例年とは異なったのだ。
急に訪れたチャンス! わたしは厚着をして三ノ宮の東遊園地に向かって走った。


ボランティアの有意義な時を過ごしていたが、「今どこにいるの?あと一時間で帰って来て!」と甥っ子から携帯電話。
引き上げようとしたところ、ひとりのシスターが「わたしも早退するからいっしょに炊き出しの食事をしましょう」と
手際良く誘ってくださった。
炊き出しは「食事を提供する」という一方通行の行為ではなく、お互いが同じ立場で「ともに作り、ともに食べよう」というスタンスだそうだ。


早めに来られた人たちと並んで温かいお汁とごはんをいただいた後、
シスターとわたしは三ノ宮駅まで息をきらして歩きながら話た。
修道院の仕事があるので早く引き上げないと・・・」「わたしは父の看護があって・・・」


そう話した途端、シスターの歩みが急に落ちた。
そして、こう明かされた。シスターはこの一年の間に父上と御親戚を相次いで見送られたそうだ。
しかもそれは、ほとんど看病できないほど急なことで、シスターのお心にはまだその痛みが大きく残っておられた。
「どうか、わたしの分もお父さまに出来る限りの愛を注いで差し上げて。
修道院に帰ったら、すぐに“不思議のメダイ”をお送りするからお父さまとあなたの身につけて」
そう言われて、わたしの住所を受け取られた。


正直なところ、わたしは信心道具にあまり関心がない。
でもシスターの思いはとても大切に感じたので父に報告した。
送っていただいた“不思議なメダイ”を父はとても喜んで、「携帯電話につけてほしい」と言ってくれた。
父にとって携帯電話は最後まで大切な宝ものだった。
なぜなら、最愛の孫たちから頻繁に「ガンバ!じいじ!!」のメッセージが届くし、わたしを呼び寄せる最強の武器でもあるし。
仲良しの友だちにもベッドの上から連絡をとれる。

結局、最後まで携帯電話には“不思議のメダイ”とわたしがプレゼントした“六甲山牧場限定のキューピー”を
ぶら下げていてくれた。


なかなか落ち着いてペンをとることができず、シスターに父の帰天を報告できたのはクリスマスの頃だった。
そして今日届いたシスターからのクリスマス・カードを開けて、わたしはほんとうにびっくりした!


なんと!シスターの父上のご命日とわたしの父の命日が、一年違いの同じ2月28日。
神さま、あなたって何てステキなことを。。。
シスターがしたくてもすることができなかったことを、もしわたしが少しでも代わりにさせていただけたのなら、
きっと神さまがシスターの父上に、愛娘からのものとして包装し直して届けてくださったにちがいない。