小さな舟は風に吹かれて 3


第一回目のリハーサルの後、主催者側から夕食へのご招待があり、近くのイタリアン・レストランへ出かけることになった。


あとでわかったことだが、キーボード伴奏のМさんもわたしと同様、まだ少し緊張していたようだ。
    なぜなら、Мさんにしてみたら、わたしが「クラシック出身だから」。
    わたしにしてみたら、「こんなにすてきな演奏ができる方だから」。
どちらの理由もよく考えたら見当ちがいの心配だったかもしれないが、わたしたちは初対面だったこともあるからだろう。
なぜならCDの鍵盤楽器はすべてМさんの演奏だが、今回の録音は皆が一同に会して入れるのではなくそれぞれの演奏をコンピューターに入れて合体させる方法をとったので、お目にかかることがなかったのだ。


その上、とても物腰がやわらかで優しさの塊のようなМさんに、ガサツなわたしは少し緊張(^_^;)
                        ボロが出ては・・・という自愛心もあったから。


ややぎこちない会話をしながら、わたしたち3人は六本木ミッドタウンのイルミネーションに案内された。 うゎ〜!キレイ!!
ディズニーランドへ行ったことのないわたしは、こういう光景を見慣れていない。神戸のルミナリエとは何だかちがう。


キャッキャとはしゃぎながら楽しい散策をして、レストランへ。
みんなで数々のディッシュを分かち合いながら話が弾んだ。
音楽や料理などの話題でいろいろ語り合って、店を出ようとした途端「うゎあ(+o+)」

バケツをひっくり返したような雨が降っていたのだ。さっきまでとても澄んだ空気だったのに・・・まさか今晩降るとは!


すると出口近くで老シスターが小さな手提げ袋を開けて、折りたたみ傘を取り出し始めた。
「まぁ、シスター!用意がいい。すみません・・・」とわたしたちは頭を下げた。
一本手渡され、次の人に一本。誰と相合傘になるのかな?と遠慮がちに手を伸ばすわたしたち。


ところが!!小さな袋から出るわ、出るわ!ついに人数分、つまり5本の折りたたみ傘が出てきたのだ。
「うゎぁ〜\(^o^)/」 びっくりと同時に大笑い!レジを打つお店の人も目をむいておどろかれた。
ドラえもんのポケットみたい!!」
内心「せいぜい三本くらいかな?」と思っていたわたしたちは、おなかがよじれるほど笑い転げた。


シスター方の細やかな愛と備える賢明さがとても楽しい形で現れて、わたしたちはすっかりリラックス。
赤坂の道を上り下りしながら、どしゃ降りの中を軽い足取りで進んだ。
ずっと前からいっしょに仕事をしていた仲間のようにおしゃべりしながら・・・(*^。^*)(^o^)(*^_^*)