冬の樹

はだかになった 冬の樹の
からだの中に 小さな芽


ずっと前から 神さまが
準備している 春のいのち


つめたい雨をすいこんで
寒い風をじっとがまん



冬のあとにはきっと来る 春はここにきっと来る
冬のあとにはきっと来る 春はここにきっと来る           
  CD「風のなかに」より 詞:こいずみゆり



手がちぎれるかと思うほどの冷たさを感じると
果樹園で観た世界が脳裏に浮かぶ。

    色白美肌のいちじくの樹、硬い表皮を削られたブドウの樹、
    天に向かってまっすぐに手を上げる梅の樹、虫が上手に卵を宿した柿の樹。


沈黙している彼らにそっと左耳を当ててみると、
風の冷たさを感じる右耳とは逆に、樹の体温を感じる。
そして、枝の内奥にはさらさらと何かが流れるような気配が。


人の目には死んでいるかのように見える冬の樹の中に
“ずっと前から”神さまはいちばん大切なものを用意して
凍えるわたしが頬を寄せるのを待っていてくださった。


冬の樹の中にも、わたしの中にも新しいいのちが始まっている。