冬の樹 2
20代の頃だったと記憶している。
バスの車窓から毎朝目にする美しい樹があった。
なぜか葉を落としきった冬にだけ目が留まる。
まっすぐに天を指す枝。
一枚も葉を纏わない枝の間に広がる澄んだ冬空。
あまりの神々しさに魂が打たれた。
ことばでは表わしきれない“神の世界”を観たようで、
諸能力が停止するように、わたしの内奥が鎮まった。
それと同時に、何か眼の奥から脳天にかけてスーッと清い気が通り抜けて、心には温かいものが満ちてくるようだった。
その後、わたしは最愛の十字架の聖ヨハネと出会い、自分の観た世界にあらためて感謝した。
そして大好きなご復活のラウレンシオ修士。
その著書『神の現存の体験』p.18では
「冬に一本の枯れ木を見て味わった・・・神の知識」と明かされている。
冬の樹が美しいのは、やはり“神の世界”が透かし見えるからであろう。
写真:イタリア、聖フランシスコが示現を観た洞窟の上にある修道院の庭