地上の天国
「この車でお墓参りに来てね」
そう繰り返す父は、わたしの運転で三度ほど墓苑までドライブを楽しんだ。
「まっすぐ、まっすぐ」「そこから右へ寄せて」「前に言ったでしょ」
「もう(;一_一) わかってるって」「黙ってて!」「ほら上手でしょ」
ワイワイ言いながら三十分もハンドルを握ると、美しい瀬戸内海を見下ろすお墓に着く。
お墓が大好きな父は、新しい洋風のお墓を建てて、先祖のお骨を引き取ったのだ。
今日はそんな父の納骨のため、家族は現地集合。わたしは骨壷とお花を積んで出発。
一人で運転していても、父はとなりで嬉しそうに話しかけてくるようだ。
ほんとに楽しい(*^_^*)
父に叱られそうだが、実は今日、道をまちがったために遅れてしまった。
「おそくなりました〜」
車を降りてお墓に向かうわたしの足が止まった。
小学生と中学生の甥っ子たちがせっせと墓石を洗い、ていねいに草を刈っているのだ。
納骨の司式は司祭でなくてもいいので、わたしが先唱して式を進めた。
父の大好きだった「いつくしみふかき」を歌い、祈り、いよいよ納骨。
骨壷を開けて、わたしたちは少し「ジイジ」を食べた。
「食べたらどうなるの?」「いつもジイジがいっしょにいてくれるよ」
わたしは、いつか彼らが食べることになるであろう「ご聖体」を意識して
そう答えた。
さわやかな風が吹きぬける青い空の下、そこはもう“地上の天国”だった。