ホルン・アンサンブルの夕べ

昨夜、恩師近藤先生が大学の教職を辞されるということで、教員としての最後の演奏会があった。
ちょうどわたしが在籍中に始まった「ホルン・アンサンブルの夕べ」。

わたしのCDを聴いてくださった先生が涙を流してくださり、その感想文とともに招待チケットを送ってくださったのだ。

最近のわたしはパフォーマーとして人前に立つことが増えたので、「音楽家とは何か?」という自分への問いかけをしながら聴いていた。


泣く子も黙る近藤先生」と言われ、ほんとうに怖い先生だったが、そのお心には生徒たちへの純粋な愛が脈々と流れておられた。
純粋で熱いお心故、いい加減なことや表面的なことを一切おっしゃらない。だから、男子学生も半泣きになってレッスン室を出て来ることがあった。ところがわたしたちは、落ち着くまで中庭で話をしたり、黙々とホルンを吹くうちに、いつのまにか先生の門下生であることを感謝し、誇りに感じていたようだった。


何年ぶりかでお目にかかった先生は、とても美しいお姿だった。ピンっと伸びた背筋。やわらかで、しかも何にも囚われていないさわやかな笑顔。スマートな所作。見ているだけでも、こちらの心が洗われる。今回は編曲と指揮を担当されたが、これほど心温まるステキなステージは初めてだった。先生の後を継いで大阪フィルの首席と大学教員を継いだ同級生の池田くんが楽屋でしみじみ洩らした。
「ゆりちゃん、(ステージで明かされること、音楽で表れ出るのは)やっぱり“人間”や。すごいわ。勉強になるわ・・・」と。


まったく同感だった。どんなにすてきな衣装をつけても、セットアップしても、きれいな節を奏でても、結局ははだかで舞台に立つようなものだ。自分のあり方・生き方・考え方がすべてが出てしまう。たいへんなことだ。

いつもステキだが、今日の先生は特に神々しかった。長年、誠実にご自身を捧げてこられたことが結実して、輝きとなって表れたようだ。
すぐそばにおられる先生に聞えると恥ずかしいので声にしなかったが、わたしたち門下生は心の中で「先生を誇りに思う」「わが師はステキだ!」と感じていたに違いない。


いっしょに楽屋まで来てくれたヴァイオリンの友だちは、わたしたち師弟関係と今日のステージのすばらしさに感涙していた。
先生と、そして今も兄弟のように仲の良い門下生との出会いは、どれほど感謝してもし尽くせない。神さまに合掌。

「音楽家って、感動を届ける仕事人」なのかもしれない。 先生、今夜のすべてに感謝します!