Exodus 〜脱出〜

夜が更けても激しい咽頭痛がわたしを眠らせなかったので、じっとしておられずにテレビをつけた。NHKスペシャルが目にとまり、静かに引き込まれていった。「虐待カウンセリング〜作家柳美里・・500日の記録」の再放送。虐待の親子連鎖がテーマだ。
命の危険なく朝を迎えることができる今のわたしは、その恵みに慣れ切って忘れかけていたことが映像に流れていた。復活節の今、主の受難をあらためて振り返るように、番組を観終わった後、少し思い巡らした。



最近は忘れがちだったが、かつてのわたしはこのテーマを深く考える状況に置かれていた。脱出(exodus)。 この世界には今か今かとそれを待ち望んでいる人がどれほどいるであろう。
そして、たくさんあるわけではないと思うが、「出エジプト記」(Exodus)のように不思議な出来事が重なって乳と蜜の流れる地へ運び出されるケースも実際に見た。それは誰か一個人の手腕によってではなく、“神のあわれみの御手”が成し得たと信じている。“神のあわれみの御手”が様々な人を介して大切なアドバイスを教え、当人がそれに耳を澄まして実行に移していったのだ。
災害や社会の目に触れる試練以外のこういった隠れた苦悩に、今も多くの人が声を失うほど苦しんでいるということをいつも忘れてはならないと改めて思った。この番組を機に、また祈りを捧げていきたいと思う。



この地上では100%の加害者も、100%の被害者もないのではないか・・・
この世を旅立つまでは100%の地獄も100%の天国もありえない・・・虐待の連鎖に苦しむ人に身近で接した経験から思う。
そして、“神の御手”で断てない連鎖はない!と確信する。
神さまはわたしたちの心をご覧になっておられる。神さまはわたしたちの叫びを聴いておられる。
神さまが「よし!」と思われた時に然るべき方法を教えてくださる。
涙も声も出ないほど苦しい人々にわたしは告げたい。 待とう!聴こう!叫び続けよう!必ず、時が満ちて「手段」が告げられる。
その時、謙虚にその声に従った人のからだは海底から静かに浮かび上がって、やがてその瞳には水面の光が映ってくるだろう。