天使たち Ⅰ

うっかりして試練に足をすくわれた時、祈りが浅くなり、ついには心が干からびてくるようなことがある。つい最近もそんな自分に気がついて、祈りを見直してみた。

全身を調整することから始めて、全存在をもって祈ることに再度取り組んでいくと、見えてきた!見えてきた!
しばらくご無沙汰だった“天使たち”が見えてきたのだ。 もちろん肉眼に映るのは、羽根のはえていない天使たち!
地上に姿を表わす天使はいろいろな着ぐるみを着ているようだ。ある時は年配の男性、ある時は年若い女性・・・など。



鈍った心がハッとさせられた出会いは、ある朝に訪れた。
燃えないゴミを両手に抱えてゴミステーションに向かっていたときのことだ。
「台車に乗せればよかったな〜」と心の中でつぶやきながら、足に絡まろうとするゴミ袋を払いながら歩いていると
ゴミを出し終えた初老の男性がこちらへ歩いて来られた。
するとわたしに近寄って、わたしの手からヒョイとゴミ袋を取り上げたのだ。ビックリしていると、
「いいから、いいから」と手持ちのガムテープでわたしのゴミ袋の弱っているところを補強して、信号を渡ってステーションまで
運んでくださったのだ。そのご親切に感動して、その方の背中に向かって何度も「ありがとうございます!」と繰り返した。
何という優しさ!!
 


またある日の夕方、スーパーのレジに並んでいたところ、わたしのすぐ後ろに立つ小学生がスナック菓子を三袋だけ抱えて立っていた。
「どうぞお先に」と譲ったのはいいのだが、その前の人の支払いで何かトラブルがあったらしく時間がかかっていた。
熱があったわたしにはその数分が長く感じて、ボーっとしてきた。その時、サービスコーナーから店長らしき人がサッと駆けつけて
隣りのレジのキーを開け、「どうぞ!」とわたしを誘ってくださったのだ。
「助かったー」と大きく息をついた。食料を袋に詰めながらもう一度感謝をこめてレジを振り返ると、あら?
今開いていたレジが閉まっていた。人影もない。幻だったのかなー?
熱でふわふわしながら「もしかして天使だったのかしら?」と気づくと、うれしくてたまらなかった。



どんどん熱が上がったため、医者に勧められて開いているクリニックに向かうことになった。
タクシーに乗ったはいいが、意識が朦朧としていたので最寄りの駅を間違えて告げてしまった。
住所の読み方も間違っていたので、始めて向かうクリニックが見つからない。
何とその時、運転手さんは早々にメーターを切ってあちこち探し回ってくださったのだ。
それだけではない。悪寒のために厚着したわたしが乗ると、暑い日だったのにクーラーをすぐに切ってくださった。
また天使を見たようなうれしさに包まれる。


不思議ことに、天使に会い出すと次々に現れて、楽しくっておもしろくってたまらない。
次の天使はどんな“着ぐるみ”を着ているのだろう?主婦の格好かな?学生さん風かな?
目覚めてくると逆に、ガックリと気落ちしていた時間を反省する。神さまはわたしを助けるために、絶えず天使を送ってくださっているのに
自分の目が閉じられていたから、心にすだれが掛かっていたのだ。
毎日、天使が見たい。いや、み心にかなうよう祈りに精進していると、魂の瞳に自然に天使が映るにちがいない。