花束に光る露 〜身代り〜


                                   撮影:まちのビデオやさん
本田美奈子さん七周忌」  パソコンを閉じようとした時、ニュースの写真が目に留まった。
あれは七年前、たった七年後にこういうことになろうとは・・・


 本田美奈子さんが帰天されて数カ月後、彼女のドキュメンタリー番組が初めて放映された。その日わたしは
白血球の異常で、ある病院の準無菌室で力なく横たわっていた。肝臓の数値も6000くらいで、みかんのような顔色だった。
 翌日、血液疾患の専門医でもある院長先生がわたしのベッドサイドで「昨日のあの番組、観ました?わたしはこう思うのよ・・・」と
本田美奈子さんとわたしの病状や治療法を比較して、安心させてくださった。


 その時の病気は奇跡的に全快したが、今でも丈夫とは言えない。でも、たいていのお医者さまは一見元気そうなわたしを見て、
弱い体質であることに気づかれない。だから表面的な処置が多くなってしまう。
 そんなわたしに半年前、神さまがひとりのお医者さまとの出会いをプレゼントしてくださった。
間もなく、わたしの体質に気づかれた先生は、コンサートをフルステージこなす体力を持たないわたしに宣言された。
「秋のコンサートはフルステージこなせるまで、わたしが責任もって体質を改善します!」
わたしより若い、細い女性である先生は、治療の度に力強い声でそう繰り返された。

 
 ところがコンサートがある週のはじめ、わたしは三日ほど高熱を出してしまったのだ。やっと平熱まで戻ったとき、先生のところに出向き、最後の調整をお願いした。その時、渾身の力をこめて施術してくださる先生から、わたしの全身に熱い祈りが注がれていることを感じて、心の中で合掌していた。


 そして土曜日が来て、コンサートが始まった。一週間声が出せなかったのに、何とか歌い出した。ところが、夏のころからコンサートを心待ちにしておられた先生の気配が会場に感じられなかったのだ。視力の関係で客席のすべてを見通すことはできないにしても、このコンサートを最も楽しみにして、全力を注いで準備してくださった方のおひとりがいらっしゃらないことは、空気で感じた。


 数日たって受診した際、先生が高熱を出してコンサートに来れなかったことを知った。
  「先生、もしかしたらわたしの菌がうつったのでは?」
  「どうかしら?それははっきりわからないけれど・・・確かに、うつしたら治るって言いますものね(笑)」
  「先生、きっとわたしの“身代り”になってくださったのでしょう」
  「確かに、コンサート前に来られた時、(高熱で弱ってしまっているわたしを見て)『わたしが代わってあげたい!』と思いながら治療していましたよ」


“自分の望みや楽しみを捧げて、相手を生かす”  “相手の病をわが身に負う”
これ以上の隣人愛があるだろうか。ほんもののクリスチャン、ほんものの天使と出会えた恵みに、ただただ合掌。
医者の保護者聖ルカさま、先生をあらゆる祝福でお満たしください。