ルルドで起こったこと ②

ミサが行われるグロットに着くと、すでにA師は祭服に着替えて近づいて来られた。
歌の番号案内をする間もなく、「すぐにミサを始める」という意思を表わされた。
巡礼地は次々とミサの予約が入っていて、次のグループのために時間を守らなければならないからだ。


朗読係のN氏と先唱や侍者をするわたしは、促されてグロット内部に入り、十字架の前の椅子に荷物を置いた。
心の準備をする間もなく、わたしがマイクを通して聖歌の先唱を行うと、日本からの巡礼団の歌声が澄んだ空気に響きだした。


「主よ、あわれみたまえ。・・・・」
ミサの進行につれて、心が急速に鎮められていく。

今、ここにおられる三位一体の神、グロットの中で優しく見下ろすマリアさま、青い空、澄み切った空気・・・そして、わたし。


ただそれだけが満ちる時間の中で、静かに心が統一されていく。
わたしは今回のルルド巡礼に一つのテーマを抱いて臨んだ。何か大きくまちがっている今の自分の生き方をどう変えたらいいのか。
「回心と心の清め」をいただきたい!


そのテーマに対する答えが、ミサ中のわたしの心と目の前の澄んだ空間にサーっと広がった。
自分の召命(神さまが今のわたしに望まれていること)が心に刻まれた瞬間、そのために手放さなければならないものもはっきりわかった。
どうして、今まで握りしめていたのか・・・そう思うと惨めさで泣けてきたが、神さまもマリアさまも、その情けないわたしを
喜んでくださっていることがハッキリと感じとれる幸いな時間が流れた。


巡礼団の席に、他の観光客や地元の人の姿も見えるようになり、ミサに熱気が出てきた。
ところが、それに反して寒い!とにかく寒い! こんなに厚着してホカロン三つで武装していても、芯まで冷える。
腰が痛く、立っているのが辛い。座るのも辛い。
自分のからだを取り返しのつかない状況に追い込んでしまったようで、わたしの心は専心モードから不安モードへと戻ってきてしまった。