空焚き

ずいぶん前のことだが、人がひとり入れるような大きなお釜が強火で空焚きされていた。
現場に居合わせて、何か異常な気配から空焚きに気づいたわたしは、すぐさま冷水を注いで温度を下げようとした。
なぜならそのお釜にはふだんローソクが入っており、空とは言え付着した蝋に引火しそうで危険を感じたのだ。


そんなわたしの腕を誰かがギュッとつかんだ。振り向くと高齢の女性だった。
「だめ!急激に冷却しようとしたら、お釜が割れてたいへんなことになるのよ。
火を消してお釜が冷えるまで、ゆっくり時間をかけて待ちなさい。決して冷たいものを放り込まないように」
“おばあちゃんの知恵袋”が大きなアクシデントに発展するのを防いだ。


わたしは唸りながら考えた。これはどんなことにも当てはまるのではないだろうか。
危険を察知して思わず手を差し伸べたり口を挿んでも、その人が受けとめることができる段階でなかったり、
準備ができていないなら、逆に過分な衝撃を与えてしまう。
たとえ真理であっても、場合によっては驚かさないように慎重に告げなければ。
ま、時にショック療法も目覚めさせることになるし、わたしも危ないところをそういう刺激でずいぶん助けられたこともあるから、見極めが大切なのだろう。


ところが先日、失敗してしまった(-_-;)
ほとんど無意識で口にしてしまったのだ。あ〜反省!
てっきり水(アドバイス)を求められていたのかと思いきや、空焚きだったのだ。
判断をあやまったのは、私の祈りの不足、祈りの浅さ故。
今日からまた「主よ、あわれみたまえ」と繰り返して、出なおそう。